名門・広陵高校野球部で起きたとされる「いじめ問題」が炎上している。被害を訴えた生徒は転校を余儀なくされ、その後、別の人物が「性的暴行もあった」とSNSで実名も挙げた。そこには加害者とされる複数の部員だけでなく、指導にあたる教師の名前まで含まれており、この衝撃の事実は瞬く間に拡散されていった。
いじめの内容は検索すればどれだけでも出てくるので割愛し、カウンターPRESSは「なぜ高野連は動かないか?」を報じたい。インタビューに協力してくれたのは、とある名門高校野球部の元監督だ。
高野連が有力高に甘い「わかりやすい理由」
高野連の正式名称は「公益財団法人 日本高等学校野球連盟」。2023年度末(令和5年度末)の硬式野球部の加盟校数は3,818校。組織は日本学生野球憲章を基盤として運営され、この憲章には「高校生の健全育成」や「スポーツマンシップの涵養」がうたわれている。当然、部員の暴力行為や不祥事があれば、大会出場停止や一定期間の活動停止といった処分がくだされる。
しかし、この組織には問題もある。処分が甘い例があるのだ。
例えば2017年には大阪桐蔭高校(大阪)で、部員の飲酒・喫煙が発覚。学校側には厳重注意がなされ、当該部員は退部、しかし大会出場は認められている。2022年には仙台育英高校(宮城)で部員の飲酒・喫煙がSNSで拡散され、出場辞退を求める声が高まったものの、処分は対外試合禁止3か月にとどまった。
カウンターPRESSが話を聞いた、ある野球部の元監督・Oさんが話す。
「まず前提ですが、高野連は全国を直接管理しているわけじゃなく、実際の運営は都道府県ごとの高等学校野球連盟(地方高野連)が担っていて、そこからの報告や提案を踏まえて中央の高野連が最終判断を下します。
つまり、ある高校で不祥事があったとして、その対応は、まず地元の地方高野連が動いて、その上で全国高野連が関与する流れになるんです」
ここからが問題をはらんでいる。
「でも高野連の役員は、主に県内の加盟校の校長や野球部長(教員)から選出されます。つまり、地方高野連の役員は、有力校のOBがつとめている場合が多いんですよ」

広島高野連幹部に、広陵高校の校長が!?
調べてみると、O監督の言葉は正しいのでは、という結果が出た。下の資料を見る限り、広陵高校の校長が広島高野連の副会長の地位にあるのだ。また、ほかの広陵高校関係者も広島高野連に入っていることがわかる。
一般財団法人広島県高等学校野球連盟の役員一覧
https://www.hiroshima-hbf1950.com/img/file16.pdf
広陵高校歴代監督・部長一覧
https://www.koryo.ac.jp/outline/greeting/
広陵高校理事長・校長挨拶
https://www.koryo.ac.jp/outline/greeting/
O監督が「その界隈の人の気持ち」を解説する。
「不祥事が起きた時、学校側が一番恐れるのは『甲子園に出られなくなること』です。次は……言い方は難しいんですが、ぐちゃぐちゃになることですね」
ぐちゃぐちゃとは?
「例えば特定の部員を退部にしたら、部員やその親は『うちの息子も暴力に耐えてきたのに!』と怒りますよね。こういう高校には暴力の連鎖があるわけです。
指導も問題にされかねません。例えば、遅刻が多いとか約束事を守れない子がいて、我々指導者側が『もうお前辞めろ!』と言ったとします。でも、それを蒸し返されて『パワハラだ』と言われたら反論できません」

ぐちゃぐちゃになれば、自分の身にも、ほかのOBの身にも悪影響がある。実際に広陵高校では、元プロ野球選手が後輩に暴力を振るっていたという噂が持ち上がり、これも炎上中だ。
「下手に大ごとにしたら大学への推薦枠も減ってしまうかもしれない。だから甲子園には出られる程度の処分を下した上で、穏便に収めようとするわけです」
元監督に聞いた。やはり監督も、こういう問題が起きたら穏便に収めたいものですか?
「そりゃ、ね(笑)。だけど、今はもうそういう時代じゃないのはわかってますよ。こういう問題が起きた時は、反省するチャンスでもあるんです。この機会に暴力追放に真剣に取り組んでほしいと思いますよ。でないとね……
野球をやる子が減っちゃうんですよ。そもそも今も、野球をやる子が減ってて問題になっています。そんな状況なのに、甲子園で選手のプレーよりいじめに注目があつまるようじゃいけない。
私はアマ野球全体のためにも、これを暴力を追放する機会にしてほしいな、と思いますけどね」