メディアも、メディアを叩く側も口にしない事実がある。メディアのほとんどは「株式会社」だということだ。NPOや自治体と違って、収入がなければ潰れてしまう。特段、正義を執行する機関ではなく、「正義」「報道」「公正」といったイメージを元にカネを稼ぐ機関なのだ。
どの会社でも、成績が芳しくない営業担当が上司から「問題は把握してる?」「来期の目標は?」と詰められるシーンくらいはあるだろう。メディアも同じで、雑誌が売れなければ編集長は異動、キャリアに傷がつく。番組のプロデューサーなら、閑職に追いやられ、同じ席に後輩が座ったりする。
そんなメディアに「正義」を求めるのは難しい。
正義感を持つ人物はいる。しかし、そんな人物もカネをくれる会社は叩けないのだ。
この構造がわかれば、メディアの世界の「力学」が見えてくる。
例えば「例の事件」により凋落したかに見える、旧「ジャニーズ事務所」は本当に影響力を失うのか?
先に答えを言おう。「90%、何も変わらない」だ。
その理由はカネの流れを見ればわかる。
旧ジャニーズは、多くの出版社をカレンダーで動かしてきた。例えば下の画像を見てほしい。ある有名出版社が『Travis Japan』のカレンダーを出版していて、「STARTO ENTERTAINMENT公認」という表記が見える。「構造」がわからなければタレントさんのカレンダー以外の何物でもないが、実はこれが、出版社を支配する源泉なのだ。

考えてほしい。通常の書籍は、文庫なら数百円、ハードカバーでも千数百円が相場。しかしこのカレンダーは3850円もする。印刷には美しく強い紙=若干高い紙を使うはずだが、それでも利幅は非常に大きい。
では作るのが難しいかと言えば、カレンダーはあらゆる書籍の中で最も簡単な部類に入る。日付と曜日と祝日なら今すぐスマホでわかるではないか。撮影以外、手間はかからない。
しかもこれがよく売れるのだ。3850円のカレンダーが10万部売れれば3億8500万円。30万部売れれば約10億円。ここから書店やAmazonの利益や流通費を除いても莫大な利益が残る。割合は筆者にもわからないが、これをジャニーズと出版社でわける。当然、出版社はジャニーズに頭が上がらなくなる、というわけだ。
ということは……BBCの報道でジャニーズに逆風が吹いても、出版社はジャニーズが不利になるようなことは何も書かない、書けない。そして今も、ジャニーズあらため「STARTO」は多くの人気タレントを抱えていて、画像のとおり、カレンダーを出版社経由で出している。つまり出版社が「ジャニーズの擁護までしたら世間の反感を買いかねないから今は黙っておこう」「今後もSTARTOさんとは良い付き合いをしたい」と考えていることは明らかだ。
そして、このもたれあいの「構造」を作り出したのが、かのジャニー氏なのだ。彼は「ジャニーズ出版」といった会社を立ち上げ、カレンダーを出せば利益を独占できた(何しろ作るのは簡単なのだ)。だがそうせず、彼はカレンダーで、メディアを食わせてやることにした。何とも奥が深い「芸能界のドン」だと感じる。
筆者は、ジャニーズあらため「STARTO」に所属するタレントやグループの中に、幾人も好きな人物がいる。断じて彼らに罪はない。では、メディアを責められるだろうか? いや、彼らは会社員として稼いでいるだけだ。そこには違法行為もない。ただ、所属タレントが不祥事を起こしてもメディアは報じない、それだけだ。
騙されないためには、この「構造」を知ったうえで、一つの劇として楽しむしかないのかもしれない。なお、どの会社が「支配」されているかは、カレンダーの版元を見ればすぐわかるのでご参考までに。